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シリーズ「授業」(令和6年度)

自らの生活を豊かに創造する子供の育成

横浜市小学校家庭科研究会 横浜市立東小学校
教諭 大田 桃可

Ⅰ.研究主題設定の理由

 未来を担う子供たちには、変化の大きい時代をたくましく生き抜くために、未知の課題にも積極的に向き合い、他者と協働して課題を解決していくことが求められる。こうした学びの源となるのは、子供の学びに向かう力であり、これを引き出すためには、日常生活の中から問題を見いだして、課題を設定できるように、子供たちの学びへの興味や関心を高める必要がある。そして、様々な問題に対して状況に応じた最適な解決方法を探り出そうとする子供の姿を目指し、家庭生活を大切にする心情を育み、家族の一員として生活をよりよくしようと工夫する能力と、実践的な態度や豊かな人間性を育てることへの強い願いと期待を込め、本研究主題を設定した。

Ⅱ.育てたい子供の姿

日常生活に活用できる基礎的な知識及び技能を身に付けている子供
日常生活の中から問題を見いだして課題を設定し、解決方法を考え、考えたことを表現できる子供
家族や地域の人々と関わりながら家族の一員として生活をよりよくしようと工夫し、実践する子供

Ⅲ.授業実践

1.題材名 第6学年(全6時間)

「家族のためにつくろう 1食分の献立」
~家庭実践編~

2.題材について

 本題材は、「B衣食住の生活」の(1)「食事の役割」アイ、(2)「調理の基礎」ア(ウ)イ、⑶「栄養を考えた食事」ア(ウ)イについて家庭の昼食との関連を図って題材を構成している。「家族や身近な人に自分で○○ご飯が作れるようになろう」という課題を設定し、その解決に向けて、1食分の献立における調理方法や工夫を身に付け、それらを生かして実践し、評価・改善する構成となっている。○○には、各家庭の実態に合わせて、朝、昼、夜と児童自身が実践できたり、実践したりしたい時間帯を設定することとしている。

3.題材の目標
調理に必要な材料の分量や手順、味の付け方について理解すると共に、それらに係る技能を身に付ける。
1食分の献立の調理について問題を見いだして課題を設定し、様々な解決方法やその工夫を考え、評価・改善し、考えたことを表現するなどして課題を解決する力を身に付ける。
家族の一員として、生活をよりよくしようと、1食分の献立の調理について、課題の解決に向けて主体的に取り組んだり、振り返って改善したりして、生活を工夫し、実践しようとする。
4.研究の視点と内容
【視点1】資質能力を育むカリキュラムマネジメント

 児童が基礎的な知識・技能を身に付けることをねらいとし、1食分の献立作成に繰り返し取り組むことができるよう題材を構成した。また、必要感をもって学習に取り組むことをねらいとし、全校児童に食べてもらいたい1食分の献立、家族に食べてもらいたい1食分の献立を立てるように題材を構成し、相手意識が明確になるようにした。この題材の前に学習した「家族のためにつくろう1食分の献立~給食プロジェクト編~」では、献立を作成する要素や献立構成の方法を知り、栄養素だけでなく、旬や彩り、相手の好みを工夫しながら、全校児童がおいしく食べられて元気になるような献立を作成した。そして本題材では、これまでの食の題材の総括として、給食プロジェクト編で身に付けた力を基に、各家庭の実態に合った献立作成と調理実践を行った。

【視点2】主体的・対話的で深い学びの実現に向けた指導と評価の工夫

 友達と献立や手順のよいところを伝え合うことで、児童が家庭での実践意欲を高め、家庭科での実践を通して自己有用感を得られるようにした。また、自分の考えを十分に言葉で表現できない児童に対しては、話し方の型を提示するなど、全員が安心して発表ができるよう支援し、他者との関わりを通して児童が自分の考えを広げ、見通しや振り返り、新たな課題発見を深めることを大切にした。

【視点3】誰もが安心して豊かに学ぶための今日的な課題への対応

 児童が多様な食文化を背景にして生活していることを踏まえて、各家庭における食文化の違いを尊重できるように献立を作成した、その際には、主食をご飯、みそ汁に限定せずに各家庭に合わせた主食、汁物で献立を立てるように指導した。授業や調理の場で用いる言葉については、実感を伴って理解することができるよう、国際教室との連携やICTの活用で学びを深めた。

5.成果と課題
写真やポートフォリオ等で児童が自らの学びの足跡を振り返り、自分の成長を改めて実感することで、最後の食の学習に対する意欲を高め、一人一人が課題を設定することができた。
多様な食文化の背景を踏まえ、各家庭の実態に合わせ、「家庭の味」を大切にし、実践する時間を選択できるようにして献立を立てることによって、より必然性があり、家族への思いを高めることにつながった。
一人1調理では、同時に様々なことを考えて効率よく調理できるよう児童の実態に応じて調理の手順を理解するための支援が必要である。